ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

「す、すいません!」

と、慌てふためくのに、

「……こうやって、ネクタイはほどくんだ……」

言いながら、上から包むように手が添えられて、ビクリとする。

指の間に手が挿し込まれ、いざなうように手ほどきをされて、重ねられている肌が熱をはらんでくる。

結んでいるのを、もどかしそうに解いて、

「はぁ…」

と、息をつく。

吐息が触れて、とっさにパッと手を引いて、

「…あの、会長…もう、いいですよね?」

訊いてみる……と、

「……シャツもと、言っただろう……」

ああ、まだ忘れてなかったんだと思う……。


どれだけ、無自覚に翻弄するつもりなんだろうと……。

「……シャツもって、どうすればいいんですか?」

呟いて、

「……もう会長は、私に裸にでもしてほしいんですか?」

ちょっと苛立って口にすると、

「……裸にしたいのか? 私を……」

と、じっと見つめられて、ボッと顔に火がつきそうにもなった。




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