ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「あの絵の感じでは、たいしたことがないようには見えなかったがな……」
エスプレッソを含んで、
「……それで、さっき描いていたのを見せてもらえないか?」
促されて、
「…ああ、はい…でも本当にラフに描いただけで、見せるほどのものでも……」
と、スケッチブックを渡す。
パラパラとぺージをめくって、
「よく描けてるな…君は、絵が上手いんだな」
言うのに、
「……そんなことは……」と、下を向く。
「こんなに上手いんじゃ、仕事も忙しいのかい?」
訊かれて、
「…いえ、全く…」と、情けなくも思いながら、首を横に振る。
「……さっきも、出版社で断られてきたばっかりで……」
と、またため息が漏れる。
「…そうなのか? 私は、とてもいいと思うが…」
「うまいだけで、味がないらしいです」
編集者に言われたまんまを話すと、
「…味は、あると思うがな……」
と、まじまじと自分が描かれたイラストを眺めた。
「それは、モチーフがいいからで……」
言いかけたところへ、
「…うん?」
と、顔を上げられて、その整った顔立ちに赤面しそうにもなる。