ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

地元に帰るのは久しぶりで、ちょっとだけノスタルジックな気分にもなる。

東京でイラストレーターになるだなんて、勢いこんで飛び出した頃が思い起こされて、若かった自分に酸っぱさが込み上げる。

「長野は、どれくらいぶりなんだい?」

訊かれて、

「……もう、7年以上は……希望が叶うまでは、帰らないでいようかなと思ってたので」

様変わりしている景色を見渡す。

「そうか、そんなにか…。無理を言って、悪かったかな…」

気にされるのに、

「いえ、会長のおかげで、イラストのお仕事には満たされているところもありますし、帰るいい機会かなって」

笑って、そう返す。


駅前でレンタカーを借りて、かつてのよく走っていた峠に向かったーー。



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