ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
ーー走り慣れた山道に来ると、どうにも気分が高ぶってくる。
「君の好きなように、走っていいから」
言われて、
「シートにしっかりと頭を付けていてくださいね」
と、アクセルを踏み込む。
カーブの多い峠を、エッジを効かせて曲がる。
「本当に、走るのが好きなんだな…」
横で、会長が呟いて、
「あ…大丈夫ですか?」
と、振り返る。
「ああ…しかし、ここまでとはな…」
驚かれて、
「あ…ハハ」
笑いが漏れて、
「懐かしくて、少し気合いが入っちゃって……」
と、山の上にある展望スペースに車を止める。
「……ちょっと降りてみますか? ここは、下の方も見渡せるので」
蓮見会長と車を降りて、山からの一望を見下ろす。