ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「ここで、華さんのおにぎりを食べませんか?」
「ああ…そうだな」
木のベンチに腰かけて、おにぎりをかじった。
こういうのって、なんだかいいな…と、感じる。
あのHASUMIの会長と、こんなほのぼのとした時間を過ごせるなんて、信じられないくらいだった。
「お茶、どうぞ…」
と、カップに注いで渡す。
「ありがとう」
お天気は良くて、雲の合間から暖かな陽射しが降りかかる。
「…会長は、車の運転はされないんですか?」
お茶を飲んで、ふと尋ねる。
「ああ…免許は持っているんだが」
その答えに、
「免許あるんですか?」
ちょっとびっくりして、聞き返す。
「うん…ただ、ずっと運転手に任せてきたから、自分ではあんまり運転することもなくてな…」
「だったら、ここで少し乗ってみますか? ここなら、他の車もそんなに来ないですし」
「えっ…」
今度は会長の方が、びっくりした顔つきになる。
「大丈夫ですよ。久々に乗ってみると、きっと気持ちいいですから」
「そう、か?」
と、蓮見会長が運転席に乗り込んだーー。