ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
エンジンをかけて、車を走り出させる。
山道をややそろそろと進みながら、
「……けっこう緊張してくるな…」
と、呟く。
「気持ちよくはないですか?」
「……どうなんだろうな、まだあんまり感覚がつかめなくて。私は、気持ちいいと思うまでは……」
言いかけたところへ、カーブを曲がり損ねて、ガードレールにぶつかりそうにもなって、横から急いでハンドルを切った。
「……大丈夫でしたか?」
車を止めて、「ああ……」と、息をつく。
「無理に運転させてしまって、すみません…」
「いや、君が謝ることはないよ」
「ごめんなさい…」
もう一度、謝ると、
「気にしなくていいから。止めてくれて、ありがとうな」
と、頭を優しく撫でられた。