ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「……自分だけならまだしも、君まで巻き込むことになったらと、気が気じゃなかった……」
「……私を、心配してくれたんですか?」
腕の中で、その顔を見上げる。
「……心配しないわけがないだろう?
君を、心配しないわけが、ない……」
同じようにくり返して、巻き付けた腕にギュッと力を込める。
「……私は、あなたが無事でいてくれたら……」
暖かく心地のいい腕に包まれていると、奥底にある気持ちをさらけ出してしまいそうにもなって、
「……蓮見会長」と、わざと呼んで、自分の想いを押し止めようとする。
「……。……私は、いつまでも会長のままか?」
小さな声でボソリと呟いたのが、はっきりとは聞き取れなくて、
「…えっ、今…なんて?」
聞き返したけれど、もう何も答えてはくれなかった……。