ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

「…なぁ、君は風景を描くことはないのか?」

「……描きますよ、風景も…」

「…なら、この風景を描いてみてくれないか?」

言われて、スケッチブックを出して開く。

車の窓から見える樹々を描きながら、そこに会長の横顔を入れる。

描いているのを覗き込んで、

「……私を、描いたのか?」

尋ねられて、

「……会長は、絵になりますから」

と、クスリと笑って答える。

「……ああ、やっと笑ってくれた…」

ふっと笑顔になって、

「……私を、元気づけようとして?」

そう訊くと、

「君には、笑っていてほしいからな」

言って、

「…その絵、いいな…」

と、もう一度穏やかに笑った。


「……これから、どうしようか? まだ帰らなくてもいいかい?」

「ゆっくり降りて、帰りましょうか?」

運転を代わって、山を下る。

途中の道で、おいしいピザを焼くお店があるのを思い出して、

「釜焼きピザのお店があるんで、寄って行きませんか?」

言うと、

「いいね。行こうか」

と、同意してくれて、お店に車を回したーー。



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