ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「……どうしてだろうな…」
はっきりとしたことは、その口から何も言わなくて、けれど、
抱いた腕に、きつく力が籠もって、
「……まだ、離れたくなかった」
そう口にすると、
今にもキスをしそうな至近距離で見つめて、
だけど、実際にキスをされたのは額の方で、
「おやすみ…」
と、口づけた額にかかる髪を撫で上げると、
「この道をまっすぐ行けば大通りに出られるから、これで帰るといい」
断るのを、多めにタクシー代だと渡された。
「では、またな…」
手が振られて、頭を下げて別れたーー。