ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

ーーラウンジで向かい合って座ると、蓮見会長は話を切り出そうと咳払いをして、

だけど、いつまでも何も話すことはなくて、締めている鮮やかなブルーのネクタイを手持ち無沙汰に直した。


「……あの、会長? 何を……」

訊くと、

「あっ……」

と、一瞬顔を上げて、

「……うん」

と、また下を向いた。

「……あの、お話って何ですか?」

「……ああ、うん……」

目の前のワイングラスをつかんで、

「……息子のことは、気に入ったんだよな?」

また、ランチの時と同じようにも尋ねてくる。

「……はい」

答えて、なんでおんなじことばっかりを訊かれてるんだろうと思う。

「……うまくやれそうなんだよな? あいつとは……」

それも確か、同じことを聞かれたんだけど……。

「……はい」と、くり返して、なんなんだろうと考える。

……もしかして、何か含みがあるのかな?

例えば……私が勘違いとかしそうだから、息子さんを紹介して、他に気をそらそうとしてるんだとしたら……。




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