ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「……まさか、髭を剃るなんて……」
髭のない彼は、途端に若く見えて、元からの美形ぶりがさらに際立って、
「……剃ったのは、10年ぶりだ……」
まさに美男といった感じで、あまりに完璧な格好良さに、目も合わせられない。
「……そんな…いいんですか? 10年も伸ばしていたのに……」
すっきりとした口元に、高く通る鼻筋と睫毛の陰で黒く濡れて揺らぐ切れ長の眼差し、弓なりに上がる眉に横分けにふわりと固めた黒髪、
シャープな頬のラインにその全てが整然と収まった、二枚目ぶりにただ見とれて、
剃っただけで、こんなにも容貌が変わるなんてと、目を見張る。
「ああ…いい機会だったからな…」
と、髭のあったところをさする。