ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

「……陽介様、もういい加減になさってくださいませ」

華さんが振り向いて、

「"たらし"もいいですが、場をわきまえないと、嫌われてしまいますよ」

そうぴしゃりと言われて、

「…ああ、うん…」

あの会長がうなだれる。

思わず、華さんといっしょに笑って、

「…家に入って、華さんのお茶でもいただきませんか?」

笑いかけると、

「…そうだな」

と、口元を緩やかに引き上げて、髭のないその顔に、極上のジェントルスマイルを浮かべた。

……こんな素敵な人に愛されることに、夢みたいな幸せを感じる。

中に入る後ろ姿に、

「……愛してる」

小さく言ったら、彼が振り返って、

「愛してるよ……」

耳の付け根に、チュッと口づけられた。




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