JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「色はどうする?」


「…

あんまりトーンは上げずに…
響と同じ色、入れちゃダメ?」

あのロゼワインの世界と出会った日から、
私はすっかり夕陽の虜だ。


「えっ、全然いいよっ!?
むしろ嬉しんだけどっ」

思わず興奮する響に、周りの視線が集まって…
ぺこりとその人が、バツが悪そうに頭を下げる。


そんな響も可愛いけど…

そんなに嬉しいものなの?




それからトーンを決めて。
カラー剤の準備を待ってると…

隣の席に、新しいお客さんが通された。


次の瞬間。



「え…

憧子、ちゃん?」


その声かけに、振り向いた私は…

心臓が止まりそうになる。




「うそ、ほんとにっ?

こんな所で会うなんて…
こんなに元気になってるなんてっ…

よかった…
本当に、よかった…」

そう口を覆うその人を前に…


私は何も返せず、ただ戸惑う。



どうしよう、帰りたい…

ここに居たくないっ…



「ねぇ、また働きたくなったらいつでも戻ってらっしゃい?
私から社長に頼んであげるから。

あなたは本当に勉強熱心で、とても有望な照明デザイナーだったんだもの」
< 105 / 321 >

この作品をシェア

pagetop