JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
だから先輩と会って、照明デザイナーという過去を突きつけられて…

嫌いなものに対する拒絶反応や、辛い思い。
向き合えない現状や、心に潜む葛藤に…

動揺して、居た堪れなくなったのだ。




「っ、ごめん…

今すごく、抱きしめたいのにっ…」

響がそう顔を歪ました。


今は施術中だし、私の頭はカラー剤まみれだから、無理もない。


だけど。

自分の事のように辛そうにしてる姿を見れば…
心に寄り添ってくれてるのがわかる。



「…ううん。

ありがとう…」




そして、カラー剤の塗布が終わると…


「見て、憧子さん」

この部屋には大きな窓があって。
指差された先には、ショッピングモールに併設された観覧車が覗いてた。


「…なに?」

それがなんなのだろうと、意図を尋ねる。


「最近のお客さんで、タロット好きな人がいてさ。
観覧車の事を、運命の輪みたいだって」


「運命の、輪?」


「うん。

そのカードによると…
全ては変化するし、どの流れも必然なんだって。

だから…
向き合えない時間も、必要な時間で。
それにもきっと、意味があるんだよ」
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