JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「この日、世界で一番幸せだったのにっ…」

ビデオを見終えて、泣き零すと…


「なのに…

なのに私はっ…」

そう続けて、両手で顔を覆った。



響は、そんな私の頭をいたわるように撫でて…

うん、と後の言葉に耳を傾けるように頷いた。



「っ…

その頃コンテストを控えてて、その作品に四苦八苦してた事もあったし…

ただでさえ忙しかったのに、結婚ともなるとお互いの親の都合まで絡んで来て…

私はマリッジブルーになってしまったっ。


そのせいで2人とも余裕が無くなって、ケンカばかりして…

酷い事もたくさん言ったっ。


事故の前日も言い争って……」








「そーゆうなよ!
俺だって色々考えてっ…」


「考えてるのはどーやったらそっちの都合を受け入れてもらえるかだけでしょおっ!?」


「っ、そんな事っ…

ああもっ、何で俺らこんなふうに…」

そこで煙草を吸おうとした一真が、空になった箱をグシャッとして、新しい箱を手に取った。


トトンと、煙草の箱を打ち付ける音まで腹立たしい。



「なぁ憧子…

…結婚、やめたい?」


「はあっ!?
…っ、そうかもねっ」






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