JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
堪えきれず、静かに階段を下り始めると…

ちゃんと想いを告げる声が聞こえた。


「今でもずっと、響が好きっ…」


さっきから涙を含んでたその声は、少し籠っていて。

2人は抱き合っているのだろうか…


そこに聞きたくも聞くまでもない響の答えが、容赦なく私を追いかける。



「俺もっ…
ずっと千景に会いたかったっ…」


わかっていても、それはこの胸を深く大きく切り裂いて…



「だけどごめんっ…

もう…
付き合ってる人がいるんだっ…」


刹那。

響の苦しげな涙声に、その傷が抉られる。


私のせいでっ…

必死に嗚咽を飲み込んで、階下に急いだ。



そうだ…
響はそういう人だった…


ー〈俺は永遠に身代わりで構わない〉ー

人に無償の純愛を与えられる人だから。


そして、優しくて私の事を本当に心配してくれてるからこそ。


ー「ずっと俺が憧子さんの安定剤でいるから」ー

その約束に縛られてるんだっ…



駐車場の車に戻ると。
声をあげて、一気に涙を解放させた。




響が好き…

愛してるっ…


響を、響との時間を、失いたくないっ。
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