JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「っ、ありがとう…

でも私は、もう大丈夫だから」


秀人の話をそう締めくくったものの。




どんなに十分だと言い聞かせても…
切なさや恋しさなんて、簡単にどうにかなるようなものじゃなくて。


例えば、シャンプーする時とか。
日課になったガムを、ひとりで口にする時だとか。

つい、夕食のメニューを考えたりとか。
今では母さんと一緒に作るようになって教わった、新メニューを食べさせてあげたくなったりだとか。

ひとりでベッドに潜る時とか。
抱き包んでくれた手や、そのあと髪を撫でてくれた手がもうない事だとか。


日常のふとした瞬間に、響と日々繰り返された生活が再生されて…

苦しいほどの、やるせない思いに埋め尽くされる。


いつしか依存してたその安定剤の副作用は、きっと愛情で。

その離脱症状は、こんなにも沸き起こってて…


響に会いたい。



毎日、当たり前のように。

その顔を映して、
呼吸が聞こえる距離にいて、
お互いの体温を伝え合っていたのに…


それが出来なくなったうえに。
一真以外の思い出を残したくなかった私は、その人の写真すらない。
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