JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
確かに私は、その言葉を口にしてない。

だって身代わりでしかない関係で、その言葉は大げさな気がしたし…
変に空気を重くする気がして。

なにより、さよならで充分伝わると思ってた。


でも本当は、口にしたくなかっただけかもしれない。


だけどそれで、響を中途半端な状態にさせてしまってたのなら…

ぎゅっと痛いくらい抵抗する唇を、ゆっくりこじ開けた。



「…わかった。

じゃあちゃんと、…別れよう?」


「っ…

そんなに俺っ、邪魔でしかないっ?」


「っ、そんなわけっ…」

あまりにも辛そうに、そんな誤解の言葉を口にするから…

つい。

「ただ私はもう大丈夫だからっ、響はちひろさんのところに行ってあげてっ?」


「…っ、えっ?」



ハッと口を押さえたけど、当然手遅れで…



「憧子さん、もしかして…

千景が来た時、…居た?」


言い逃れが出来ない状況に…

ためらいがちに頷いた。


「っ…

そっか…
じゃあ全部、聞いてたんだ…?」


「…

ごめん…」


「っ、そっか…
だから別れようって…

そっか…

っっ、そっか……」

その人は声を震わせて、片手で額を覆うようにして項垂れた。
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