JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「悪いな、仕事中に。

けど、憧子に内緒であんたと話すには、他に方法が思いつかなかった」


「いえ、みんなに差し入れまでいただいたし…

オーナーも視察であった時から ひでとさんの事を気に入ってて、快くOKしてくれたんで大丈夫です」


路地の入り口に差し掛かると、ちょうど会話が始まったところのようで。

憧子に内緒という前置きが余計気になって、悪いと思いながらもついまた立ち聞きしてしまう。



「単刀直入に聞く。
あんた、一真の事は知ってんのか?」


「…知ってます」


「ふぅん…
じゃあそんなのも引っくるめて、全部背負う覚悟があるって事でいんだな?」


「もちろんです」


はっきりと言い切った響に、胸がぎゅっと締め付けられる。



「…

ならいーけど。
ただ、それはあんたが考えてるよりずっと辛ぇぞ?

憧子は当時の事を漠然としか覚えてねぇ…
けどおばさんの話だと、今少しずつ思い出してるらしい。

そうなったら取り乱したり塞ぎ込んだりするかもしれねぇ。
それはあんたにとっても相当辛いはずだ。

その覚悟が、ほんとにあるって言えんのか?」
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