JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
ふと思う。


同じように、そんな願いにも似た思いで呟いた私の気持ちも…

一真に届いただろうか。




その時。


トトン、と軽快に。

煙草の箱を打ち付ける、愛しい音が聞こえた気がして…


辺りを見回したあと、眩しさに手を翳しながら青空を仰いだ。



すうっと風に流された一筋の雲が、まるで煙草の煙のようで。


その隣で陽だまりを醸して、青空に滲んでる太陽は…

一真の笑顔みたいで。



自然と、頬が綻んだ。




携帯を取り出して、カシャリとカメラに収めると。



「…何撮ったの?
太陽?」


「ん…

サプライズの瞬間は、残しとかないとね」


「…そっか。

でもこれからは…
俺が憧子の笑顔を、いっぱい取り戻すから」


その言葉で、自分が笑えた事を今さら自覚する。


「っ…

うんっ、これからも…
きっとそうなるっ…」

そうこれからも、響のおかげで見える世界は変わってく。

嬉しさと思わず溢れ出したもので、今度は泣き笑いになっていた。


久しぶりに戻って来た笑顔は…
その表情筋も衰えて、随分とぎこちなかっただろう。

だけど戻って来た。


愛が戻って来たように…
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