JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「ねぇ。
次の日曜って、セミナー?」

とある夕食後。
なんとなく気になって尋ねると。


「の、つもりだったけど…
どうしようかなって」


「どうしよう、か?」


「うん、前に受けたのと被ってるし…

憧子さんに行きたいとこがあれば、どっか連れてくよ?」


「え…

ううん、行きたいとこがあるわけじゃないの。
ただ、聞いただけ」


「…そっか。

じゃあセミナー行こっかな」

と、その話は意味なく終了。


だけど、つくづく仕事熱心な響に興味をそそられる。



「響は、なんで美容師になったの?」


「…

きっかけは、くだらないんだけどさっ…
例の、好きなコを振り向かせたくて」


「…ちひろ、さん?」


「そう。

千景とは、幼なじみでさっ。
気がつけば好きになってて…

だから少しでも気に入られたくて、髪とかカッコよくセットしてたんだけど…

そしたら髪いじるのが得意になって。
だんだん、オシャレとか器用とかって褒められるようになって。

そのうち、髪のセットとか前髪切るのとか頼まれるようになって…
それが嬉しくてさっ。

その道を極めたくなったし、千景に勧められたのもあって…」
< 82 / 321 >

この作品をシェア

pagetop