JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「色々と、思い詰めた時期もあったけど…

っ後になって、千景に対してはこっちに来たのが正解だったかなって。

俺の顔なんて、偶然でも見たくないだろうし。
俺が近くにいたら余計苦しむだろうから。

まぁ千景に限らず、みんな俺の顔なんて見たくないだろうけど…


せめて俺は、みんなへの謝罪の代わりに。
そして、ただ逃げただけで終わらないように。
今じゃすっかりのめり込んでるこの仕事で、認められるように頑張ろうって。

千景は俺がカリスマ美容師になるのを夢見てくれてたから、それを目指しながら…


…って、引いたよね」

ハッとしたように、話がそこで締めくくられる。



「…

引いた、ってゆーか…
嫌な事、訊いていい?」


「…

いいよ」


「…それ、最後までやったの?」


そう訊くと。
首を横に振って…


「あんなふうに拒まれたら…
千景の涙を見たらっ…

出来るわけないっ……」

罪悪感に苛まれるように、そう顔を歪ませた。
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