JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
「おはよ憧子っ。
あ~、上着これでいーかっ?」


「うん、おはよ。
ありがとう」

後部座席に置かれたそれを映して、助手席に乗り込む。



走り出した車内では…

秀人のいつもより高いテンションを懸念してたのに、なぜかその人は緊張した様子で。

比較的穏やかなドライブが続いた。




しばらく走って、隣県に入ると…

景色が、松林に埋め尽くされる。



それはもはや、松のトンネルで。

海風の影響なのか、屈曲した黒松達が…
光を受けて、延々と続く道に幽玄な翳りを落としてる。


なんて厳かで、幻想的な光景。



その見事な景観に、心ごと奪われてると…


「気に入ったのか?」


「…うん、すごく」


そう答えた私の隣で、めちゃくちゃ嬉しそうに笑う秀人。


そんな秀人に、心がじんわり絆された…
のも束の間。

そこからいつものハイテンションが復活した。




少しして、たどり着いた場所では…
有名な朝市が催されてて。

秀人はそこでおばあちゃん達と盛り上がりながら、名物のイカシュウマイをテイクアウトした。
< 93 / 321 >

この作品をシェア

pagetop