栄冠は君に……
にゅうぶ Azu
待ち遠しかった月曜日がやってきた。
「三浦杏桜です。野球が好きです。よろしくお願いします」
イザとなると緊張する。いつもそうだ。
人の前は緊張する。昔はこんなんじゃなかったのにな。
「あず!」
「あ、遼くん。そっか、野球部だもんね」
「うん。それより、大丈夫か?緊張、しただろ...??」
小学校からずっと同じ学校の遼くん。
遼くんは、私がこうやって人前に出るのが苦手になった理由を知っている。
「その...さ、病気、もう平気...??」
「あ、うん!それならもう...大丈夫.....だから、野球部の人には、これで」
そう言って、内緒のポーズをした。
話さなくていい。もう、大丈夫だから。
そう、思い込んでいた。いや、思い込むことで、忘れようとしていた。
そう。あんなこと、もう二度となくていい。
今は、好きなことを思いっきりしたい。やっとそれが、できるところまで来たんだから。
「三浦ー!色々と説明するからこっち来て〜!」
佐山さんに呼ばれ、グラウンドの片隅へ向かった。
秋の空は、晴れ渡っていた。