栄冠は君に……
けつだん Azu
野球部に入って2週間。
私には、まだ誰にも言えていない秘密があった。
遼くんにはバレてしまっているけれど。
「杏桜、みんなには、言わへんの?」
遼くんから、幾度となく聞かれた言葉。
言わない。
そう決めていたのに、思いがけずこんなに早く言わなくてはならないかもしれない。
「あず〜、明日検診やからな。はよ帰ってこいよ?」
9つ上の兄は、母子家庭の我が家ではすでに大黒柱。
母は今日も夜勤。幼い頃からそうだった。
少し年の離れた兄が、私にとって一番の保護者なのだ。
そう、あの時に私の異変に気づいたのも、にぃにぃだった。
「明日はひとりで行くから。お迎えはいいよ」
「だめ。俺も知りたいから」
少し過保護な部分だけは難点だろうか。