ifの奇跡
あんな閉塞的な密室にこの3人でいること自体、私の中では異様な事に感じた。

信志さんなんて…目も合わせてなかった。

回覧板を回しに来ただけなのか、彼女はマンションの外に一緒に出てくることはなかった。


「どこで待ち合わせだっけ?」

「え…あ、えと新宿で待ち合わせてるんだけど…。今からじゃまだ時間もあるし、少しプラプラしようかと思ってて。」

「そうなんだ…。僕とは反対方向だから一緒に行けるのは駅までになるね。」


残念そうに聞こえるその口ぶりに…本当に反応に困った。

それに手まで繋がれて……新婚の頃に戻ったみたいだった。

彼とは駅のホームで別れた。

久しぶりの都心はやっぱり人が多くて、私の地元とは比べものにならない位たくさんの人で溢れかえっている。

この駅周辺にいる人だけで、うちの地元の人口と変わんないんじゃないの?

と思ってしまうほど。


私の気分も、この街の雰囲気に流されてきたのか徐々に開放的になってきた。
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