ifの奇跡
「美沙…気にしなくてもいいよ。」

「え…?もしかして…さっきの…」

「うん、見ちゃった…。あっちには気づかれてないよ。」

「…そっか……、だけど私もびっくりした。だって冬吾くんと偶然に会うことなんて今まで一度もなかったのに…。会うのも数年ぶりだったしね。」


私と冬吾に、もう一度出会う事があったとしても私たち2人が交わることはきっともうない。

今のように彼とは、ただすれ違うだけの運命しかない。


「彼、元気そうだった?」


それくらい聞いても許されるかな…そう思いながら美沙に聞いた。


「うん、今は家の仕事を手伝ってるって言ってたよ。相変わらず、昔と変わってなかったね冬吾くん。」

「仕事辞めたんだ…。だけど元気そうで良かった。」


さっきまでほろ酔いだったのに、トイレに行きすぎて体からアルコールが全て抜けてしまったのか…それとも酔いが覚めたのか。

あれから場所を変えた私たちだけど、その日は飲んでももう酔えなかった。
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