ifの奇跡
「家どの辺?この先は少し暗くなるから、送ってくよ。」


冬吾と店を出た瞬間、反対の通りを腕を組んで歩いている男女が目に入った…。

私の視線は…駅に向かって歩いていくその二人に向かったままだった。

冬吾も私の視線の先を追って、通りの向こうに小さくなっていく彼らを見たのだろう。


「莉子…まさか……」

「ち、ちがうよ…何でもないから…気にしないで。」

「…………。」

「ほら、行こう。」


お互いに、言葉もなく歩き続ける。

冬吾にはさっきのが、主人だと気づかれたかもしれない。

だけど、彼は何も言わずにいてくれた。


「ココ、俺ん家。」


彼が突然、立ち止まりそう言った。

見上げたそこには、冬吾が学生時代に住んでいたマンションとよく似た外観のマンションがあった。
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