ifの奇跡
私は、手の中にある彼の名刺を握り締めながら、見えなくなるまで冬吾の背中を見つめていた。

美沙との久しぶりの再会のはずが、最後には波乱だらけの1日で幕を閉じようとしている。

マンションのエレベーターに乗った直後、

ここにいるはずのない彼女の匂いがまだこの中に残っている気がして…気分が悪くなった。

今頃は信志さんといるはずなのに…。

もう春なのに、真っ暗で誰もいない家の中はひんやりとしていて肌寒かった。

温かいお風呂から出てもまだ、彼は帰っているはずもなく

時計の針はもうすぐ12時になろうとしていた。


久しぶりに自分の部屋で一人で眠る夜。


彼と結婚して4年目…色んな事もあったけど東京に越して来てからの彼の劇的な変化に期待をしていた。

彼に愛されてるかも…そう思ったあの日々は全て嘘だったのだろうか…。

もう何を信じていいのか分からなくなった。
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