ifの奇跡
不純な動機で結婚をした私には彼を責める資格なんてないんだから。

それが私に課せられた罰なのだと受け止めるしかなかった。

だけど心の中には口に出せなかった色々な想いが、確実に少しずつ…音も立てずに降り積もっていく。


いつかそれが一杯になり溢れ出してしまう時が来るかもしれないし、このまま一生来ないかもしれない。





初めて会ったのは、私が22歳で彼が26歳の時だった。

私の仕事は彼のアシスタント業務だったから彼の仕事ぶりや真面目な性格はよく分かっていた。

プライベートは一切知らなかったけれど、彼は女性から人気があったので彼女はいるものだと勝手に思い込んでいた。

私の方は、地元に戻りあの人と別れてからは誰とも付き合っていなかった。

もう恋愛をするつもりもなかったし、正直そんな時間もなかった。


この先一人で生きていくのかもしれない…漠然とそう思っていた。


だけど母がそんな私を心配しているのも痛いほど感じていた。

日に日に弱っていく母の姿を目の当たりにして、私を1人残していく母の気持ちを考えた時このままじゃいけないと思った。

何としても母を安心させてあげたかった。

それが私が母に出来る最後の親孝行だったから。
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