ifの奇跡
彼の気持ちがキスと一緒に流れ込んできて、胸がはち切れそうに苦しくなった。

彼といたいけど、私は彼とはいられない…。

大切な事を思い出した私は、やんわりと彼の胸を両手で押し返した…。

だけど、男の人の力に敵うわけはなく…反対に彼のキスはどんどん深く絡まっていく。


「んんっ…とう…ご…離して…」


彼は自分の胸を押さえる私の両手を取ると、自分の両手と絡ませたまま私の頭上に縫い付けた。


彼の視線が私の心まで貫くほど、強く突き刺さる。


「泣くほど…嫌?」

「……とう…ご、ダメなの」


泣きながら、首を横に振る私に上から悲しそうな声が落ちてくる。


「何が?ダメだけじゃ分かんないんだよ。嫌なら嫌って言えばいいだろ…。」


嫌いじゃない…いやじゃない…。

だけどあの子の事を言えないままの私には、冬吾の隣にいられる資格はないから…。

私の手に絡まっていた冬吾の圧力が無くなり、体の拘束が消えた…。


「いいよ…行って……。」



< 139 / 151 >

この作品をシェア

pagetop