ifの奇跡
ちょうどそんな時に、上司からの勧めで彼とのお見合いが決まった。

とは言っても普段、職場ではアシスタント事務としていつも一緒にいる為、そこまで形式張った堅苦しいものではなかったけれど。

そんな理由で大事な結婚を決めた私を母は天国で父と一緒に怒っているだろうか…。



“お父さん、お母さん、いつまでも心配かけてごめんね”


自分の部屋にある両親の写真に語りかける。

写真の中の2人はどんな時でも私にニコニコと優しい笑顔で笑いかけてくれる。


母を安心させるための結婚には違いなかったけれど、だからと言って相手が誰でも結婚を決めた訳じゃなかった。

あの時、彼がいなければ私は今ここにいなかったかもしれない…

それくらい、彼の存在はあの頃の私にとって大きな支えになっていた。

私は彼の一面しか見えていなかったのかもしれないけれど、彼に惹かれた気持ちは嘘じゃなかった。



たとえそれが燃えるような恋じゃなかったとしても、



彼に恋をしていた私が……確かにいたんだ。


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