ifの奇跡
「…………」


なのに彼からの反応がまるでなくて、チラリと見ると彼はフリーズしたように固まっていた。

彼の姿に急に素直になりすぎたかもって恥ずかしくなった…。


「ちょっと…何か言ってよ。」


照れ臭さを誤魔化したくてそう言うと、見る見るうちに彼の顔が赤くなっていく。

そして、そんな彼を食い入るように見てしまった私の目を伸びてきた彼の手が覆うように隠した。


「ジロジロ見過ぎ…。」


目の前を彼の大きな手のひらで塞がれてしまったから、表情は見えなかったけど彼の声も照れている声だった。


「お前…急に素直になるとか反則だろ。」

「え….」

「…可愛すぎて困る。」


そんなことを言う冬吾の方が反則だよ…と思いながら私の顔もきっと茹でられたタコのようになっていると思った。

もう可愛いなんて言われる歳なんて過ぎたのに、冬吾は出会った頃と変わらず私が喜ぶ言葉をちゃんと言ってくれる。

可愛いなんて言われると照れくさいけど、やっぱり好きな人からの言葉だと嬉しいと思ってしまう。


「照れてる冬吾も…可愛かったよ。」

「可愛いって言うな…。」


そう言ってまた照れてる冬吾を…すごく愛おしいと心から思った。
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