ifの奇跡
結局、昨日は冬吾は帰らなかった。

“ 2週間ぶりに会えたのに帰れるわけないだろ ”

イタズラな笑顔を見せてそう言った冬吾に、何度も鳴かされた夜だった…。

朝、家に戻った冬吾が約束通り車で迎えにきてくれたのはお昼に近い時間だった。

彼の愛車の白いFordの助手席に乗りシートベルトを閉めると、車が静かに走り出した。

昨日の時点では今日の行き先は決めてなかったけど、彼の中では今日のプランが決まっているのかお台場方面に走り出した車。


今日のデートコースが、過去のお台場デートと同じコースを辿っている…そう気づくのにそんなに時間はかからなかった。

夜の海の風が頬を撫で二人の間を通り抜けていく。

彼が私の首に自分のマフラーを巻いてくれた。


「ありがとう」

「ん…。」


短くそう返事を返した彼が私の手と自分の手を絡めるとそのまま、コートのポケットに二人の手を入れて歩き出した。

私たちが向かう先には、夜の空に浮かんだ大きく輝く光の輪が見えていた。

何も言葉がなくてもこうして一緒にいられるだけで幸せを感じる。
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