ifの奇跡
彼の唇がゆっくりと重ねられ、しっとりとしたキスを交わす。

離されたその唇に、愛しそうな彼の熱い視線が注がれているのを感じる。

そして彼を見上げる私と、私を見下ろす彼の視線が交差した時

私の左手をそっと持ち上げた彼が、その薬指に唇を這わしそっとキスをした。

顔を上げた彼が優しい笑顔で、だけど有無を言わせないような雰囲気で


「莉子、今から俺が聞く質問に必ずイエスで答えてくれる?」


どんな質問かも分からないのに彼はそんな言葉を口にした。

だけど彼は私がノーとは言えないことをちゃんとわかっている…。

ただ、黙って彼の目を見つめたままコクンと頷いた私を

彼は満足そうに優しい眼差しで見つめていた。

ほんの少しの間だけ…私たちの間に静寂が訪れたその直後。


「俺と結婚してくれる?」


すぐ目の前にいるはずの彼の顔がだんだんと滲んで見え始める。
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