ifの奇跡
恋人になってしまったら、いつか終わりが来てしまうかもしれない…そう思うとその先に進むのが怖かった。

短い付き合いの中でも冬吾は私にとって…失いたくない大切な人になっていたから。

……だったら初めから友達のままでいた方がいい。

そう思っていた。

出会ってから初めての夏休みもみんなで海に行ったり思い出をたくさん作った。

この頃には、冬吾からの好意は直接本人からも感じるようになっていて、時々それらしい事を匂わす言葉も言われたりした

その日は旅行に行ってる桂子と淳君を抜いた4人で私の家で集まっていた。

途中で哲平君が足りなくなったお酒の買い出しに行く事になって美沙も一緒に着いて行ったから、必然的に冬吾と2人きりになってしまった。

2人だけで遊んだ事なんて何度もあったのに…その時の私は冬吾を意識しずぎてうまく話せなくなった。

部屋の空気がギクシャクしているのが分かってるのに、焦れば焦るほどどうしていいか分からなくなっていく。


「………………」


1人でソワソワ落ち着かない気持ちでいっぱいいっぱいになっていると…戸惑いがちに冬吾が口を開いた。


「…なぁ、そんなに俺と2人が嫌?俺、もう来ない方がいい?」

「来ないなんて…そんな事言わないで!嫌いなわけないじゃん…」


その言葉に咄嗟にそう返していた。


「でもお前…」

「私たち友達だよね?なのに会わないなんておかしいよ…」


語尾の震えてしまった声に気付かれてしまったかもしれない。


「…そうだよな。ごめん変なこと言って。今の無しな、忘れて。」


そう言って冬吾の大きな手が私の髪の毛をクシャクシャッと撫でた。

涙が溢れそうになって…慌ててキッチンに逃げた。


「何かないか……冷蔵庫見てくるね」
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