ifの奇跡
大学の夏休みって高校までとは違って本当に長い…

だけどそんな夏休みも後わずか…。

就職が決まった人もいればまだの人もいて、私は後者だった。

お盆だけは実家に帰省し、後は就活のため早々に東京に戻ってきた。


季節は冬空の雲のようにどんどんと流れていく……

気づけば半袖だった季節から長袖の季節へと変わっていた。

東京は特に季節の移り変わりが早い気がする…

時間はどこにも同じ速度で平等に流れているはずなのに…ここは

ここだけは…早送りで時間が進んでいるみたいだった。


そんな私もどうにか内定をもらい後は卒業を待つだけとなった。

桂子も美沙も無事に就職が決まり、いつものメンバーで集まることになった。


10月も半ばのその日は、私たちが初めて出会ったあの日と同じお店で飲むことになった。

お店があるのは、冬吾たちの大学のある最寄駅。

美沙と2人で向かう車中、美沙が私に聞いて来た。


「ねぇ…莉子」

「ん、何?」

「莉子も本当は…冬吾くんの事、好きなんじゃないの?」


冬吾への想いを口にした事はなかったけど親友である美沙には私の気持ちはバレていたのだろうか…


「冬吾はね…私の中では彼氏以上に大事な人なの。美沙と同じようにこの先ずっと失いたくない大切な親友。男なのに親友って言い方はおかしいのかもしれないけど…こんな人にはもう二度と出会えないと思う。それくらい大きな存在…だから冬吾とは今のままがいいんだよ……」

「そっか…莉子の冬吾君への想いは恋じゃなくて愛だっだんだね。」

「愛!?」


美沙の発言に思わず大きな声が漏れた。

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