ifの奇跡
「うん。だけど考えてみて…。冬吾くんにこの先恋人ができたら?莉子はそれでも今と同じように友達でいいって言える?友達ならずっとこのままいられるって思っててもそれは今だけなんだよ。彼に恋人ができて…いつか結婚したら今と同じようにはいられなくなる時が必ず来るんだから。男女の友情は女同士と同じようには続けられない時が必ず来るんだよ」


美沙の言葉はこの先必ず訪れる未来の現実…分かってたけど目を背けていた事だった。


「きつい事言ってゴメン…だけど莉子の事このまま放っておけなくて黙っていられなくなった。哲平から聞いたんだけどね…冬吾くん以前から大学でも人気があって女の子に告白されてたらしいの。だけど冬吾くんは莉子の事がほら……だから今までは直ぐに断ってたらしいんだけど……」

「…だけど?」


言いにくそうに止まってしまった美沙にその先の言葉を促した。


「…うん。だけど最近は冬吾くんも莉子の事諦め方向に向かってるみたいで…先日ある女友達にされた告白は返事を保留にして悩んでるって」

「……そうなんだ」

「だから!莉子にも後悔して欲しくないの。このままじゃ莉子絶対に後悔するよ」


美沙が最後に言ったその言葉は当たっていた…

だって、もうその話を聞いたそばから…不安でたまらなくなってる私がいる。


「…美沙ありがとう。話してくれて。私もちゃんと考えるから」


今この場で “冬吾に告白する ” とか具体的な事は何も言えなかったけれど、美沙の言葉で目が覚めたのは確かだった。


“冬吾を他の誰かになんて、渡したくない”


今まで目をそらし続けていた事がもうすぐ現実になってしまうかもしれない。

そう思うだけで…心臓を太い針で刺されるような痛みが走った。
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