ifの奇跡
簡単に決めたわけじゃない…。

自分の中でも葛藤もあった。

だけど答えはこれしかなかった…。

迷う時間を自分に与えないまま課長に話をし辞表を提出する事で、もう後戻りは出来ないようにした。

もう前に進むしかない…。


姉にも帰宅後すぐに電話をしてその事を伝えた…。

姉は私だけに背負わせる形になった事を申し訳ないと電話の向こうで泣いていたけど…これは誰のせいでもないのだ。

私が母と一緒にいたいから。

母のそばにいたいと思ったから決めた事だった。


ただ…たった一つの心残りは冬吾の事。


彼には何も相談する事なく勝手に決めてしまったから…。

なんて話していいかわからなくて、電話をかける最後の発信ボタンを押す事がなかなか出来ずにいた。

結局その日は勇気が出なくて…冬吾と話す事は出来なかった。


彼と付き合ってから今日で彼の声を聞かないのは4日目。

こんなにも長い間、彼の声を聞かない事は今までになかった。


携帯電話を見つめながら、明日こそはかけよう明日こそは…そう思いながら眠りについた。

翌日からは、仕事にも期限が出来てしまった事で踏ん切りがついたのか…残された時間の中で今の私にできる事を精一杯やりきろうと思えた。

そして今日は冬吾にも会って話そうと決めていた。

朝、出勤途中に入った彼からのメール。

終業後の18時に私の会社のある最寄駅で待ち合わせることになっていた。
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