ifの奇跡
「そんな顔で見られたら…俺いま、ここで襲っちゃう自信あんだけど。」

「…バカ。」


相変わらずのエロ発言をする冬吾に、久しぶりに憎まれ口が口をついて飛び出した。


「いや…マジで。でも今は我慢する代わりに今夜は寝かせる気もないから。覚悟しとけよ。」


そう言った冬吾の目が本気の目で、もう、バカ…とは言えなかった。

車内の暖房が効き過ぎているのか、それとも冬吾のせいなのか顔だけがやけに熱かった。





その日は冬吾の宣言通り、本当に朝まで寝かせてもらえなかった私…。

声も掠れて…心なしか喉も痛い…。


「お水…ほし…い。」


かすれ声でお願いをし、ベッドの上で脱力して横たわる私に冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってきてくれた彼が口に含むと口移しで水を飲ませてくれた。

口の端から溢れた水が私の首に流れ落ちていく。


「もっとほしい?」


声を出すのも辛かった私は、コクンと首を縦にして小さく頷いた。


「いい子だな、莉子は。」


彼は私の濡れた首筋の水滴を取ってくれると、もう一度私に水を飲ませてくれた。
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