ifの奇跡
辛くても…辛いと言って立ち止まる事は許されなかった。

私がしっかりしなきゃいけない…

ただその必死の思いだけで立っていた気がするあの頃。


冬吾とは一応続いてはいたけれど3月のあの日以来会うことも出来なくて、私の中では既に別れを決めていた…。


本当はもっと早くに言わなければいけなかったのに……


日に日に大きくなる冬吾への罪悪感と我が子への申し訳ない気持ちに胸が潰れそうだった。

子供の事を彼に一生黙ったままで…今までと変わらずに彼と付き合って行くなんて私にはできない。

大好きな人を騙し…裏切り続けているその現実にもう耐えられなかった。

それに私は母とここで生きて行くと決めたんだ。

彼と一緒になれる未来なんて…もう私には見る事もできない。

見る資格さえないと思った。

早く冬吾を解放してあげなきゃ……。

そして、その年の10月にわたしは冬吾に別れを切り出した。


ごめんね…冬吾

あなたを裏切ってしまった私を憎んでくれていいから…

どうか幸せになってください。


結局、友達だった冬吾も

彼氏としての冬吾も……

どちらも失ってしまった。
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