ifの奇跡
母は元々好奇心旺盛な人で、以前から興味のあった陶芸教室に最近友達と2人で通い始めた。

教室は週2回で毎回楽しんで行っているらしい。

もうすぐ、初めての作品ができるのが今一番の楽しみだと言う母の笑顔を見ていると私も嬉しかった。

年に一度、市のイベントとして展示会なども開催していて再来月にあるその展示会に出展する作品を今は製作しているんだとか。

母がどんな作品を作っているのか…私も楽しみの一つにもなった。

定期的に行っていた病院の検査の結果もなんの問題もなく、母と2人穏やかで幸せな生活を送っていた。

冬吾との別れから季節を幾つ巡っただろうか……。


仕事は忙しいけれど、滅多に残業になる事もなかったから母との時間は十分にあった。

時々は土日を利用して2人で温泉に出かけたりもしていた。

私はいつも同じ職場の人には恵まれている気がする。

ただ、上司が世話好きな人の良いおじさんで…何度か見合い話を進められる事はあった。

今のところはそのお見合い話に乗って、お見合いなんてした事はないけれど。

うちの職場は、本社が東京にあり私達のように地方にもいくつかの支店や工場があって、転勤の多い男性社員達の入れ替わりも多々あった。

独身率の多かった男性社員の中で私がアシスタントを務めている中村信志(しんじ)さんはいつもクールでそういう所が硬派でいいと女性社員からの人気も高かった。

まさか、仕事でペアだった彼と結婚する事になるなんて、この時の私は想像すらしていなかったけど。
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