ifの奇跡
上京
彼の本社勤務が決まってから引っ越しまでの期間は短かった。

日中はほぼ荷造りなどの片付けに追われる日々だった。

自分の部屋の押入れの…一番奥に隠すように入れられていた箱を取り出した。

結婚以来、目にすることのなかったその箱を開けて見た。


中には、ジュエリーボックスが2つ揃って入っていた。

もちろん…中身も綺麗にそのボックスの中に納められている。

だけど、その蓋を開けて中を見ることは出来なかった。

この箱の中身は、私の宝物?

もちろんそうだったけど、そんな綺麗な言葉だけじゃない。


今は…未練の塊。


もし言葉で表すとするなら、それが一番ぴったりの言葉かもしれない…。

その箱の中には私が捨てた未来が詰まっている気がして、冬吾と別れて以来…一度も開ける事が出来ないでいる。

だけど、捨てる事だけは絶対に出来ない。

この先もきっと…。







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