ifの奇跡
「ありがとう。」


彼はそのままリビングに戻ると思ったのに、なぜかキッチンから出て行かなかった。

どうしたんだろう……?

いつもとなんだか違う。


「ねぇ…君は昔は東京のどの辺りに住んでいたの?」

「え…?」


いきなりの質問に頭がうまく回らなかった。

だって…彼には話してなかった。

私が東京に住んでいたなんて事は…知らないはずなのにどうして…?


「あ、東京でも23区外だよ。八王子の方だから…。」

「…そうなんだ。じゃあここからは随分と離れてるよね。」

「うん…。でも、どうしてその事……。」

「君のお母さんに昔一度だけ聞いた事があってね。」


母が……言ったんだ。

別に隠してたわけでもないし、彼に言っちゃいけないわけでもない。

だけど、なぜだか言えなかったし言いたくなかった。


「そっか…母から聞いたんだ。」
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