ifの奇跡
翌日、彼と共に隣近所に挨拶に回った。

普通のご近所さんとは違って、ここは社宅…。

最初の印象も大事だし、5階建てのうちを除く19軒すべての家に回らなければいけない。


日曜日の今日は会社も休日でご主人が在宅の家も多く、お互いに夫婦揃って挨拶をすませる事が出来たのが良かった。

留守の家も何軒かあって…その残り3軒のお宅は夕方に訪ねた時も留守だったので平日の明日、私が1人で挨拶に伺うことになった。


“ピンポーン”


あまり朝早いのも失礼だと思い、11時ごろに尋ねると最初の2軒共に同年代の感じのいい奥さん達だった。

1人はまだ生まれて間もない小さな赤ちゃんのいるお宅だった。


最後の1軒の に向かうため、社宅のエレベーターに乗り3階へと向かった。

ただ、引越しの挨拶に行くだけなのに……全身から嫌な汗が流れて来る。

できれば会いたくない人がいるその部屋のインターホンを押した暫くの沈黙の後…インターホンから機械を通した女性の声が聞こえて来て思わず鳥肌が立った。


『ハイ、どちら様?』
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