ifの奇跡
いつもの様に外からバスの音が聞こえ彼を玄関まで迎えに行く。


「お帰りなさい」


彼が無表情でも、私は笑顔で出迎える。

それだけは心がける様にしていた。


「ただいま…後で少し話があるから」


彼はそう言うと、いつもの様に自分の部屋に入って行った。

バタンと閉じられたその扉の向こうで彼は一体どんな表情で何を考えているんだろう。


“それにしても彼から改まって話なんて珍しい…。”


彼がお風呂に入っている間も、どんな話なのかと気にはなったがきっと聞いても夕食の後にしか話してくれないだろうと思いあまり気にしないようにした。

相変わらずお通夜の様な晩御飯を終え、片付けを先に済ませた。


「片付け終わった?」


水道の蛇口を止めてタオルで手を拭いていると彼から声がかけられた。


「あ、うん。今終わったから。…コーヒーでも飲む?」

「あぁ、そうだな」

「じゃあもう少しだけ待ってて」
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