ifの奇跡
後ろを見ると、ドアを閉めていなかったのだろうか?全開になったドアにもたれて立っている彼がいた。


「あ…ごめん。時間かかり過ぎちゃったかな…信志さんの時間は大丈夫?」

「僕の方は大丈夫だから気にしないで。今日の服それに決めたんだ…。」

「うん、変…かな?」


ベッドの上に人型に置かれた服を見ながら聞いてきた彼に、聞いてみると


「いいんじゃない。それで。肩もあんまり開いてないし…今のも可愛いけど、肩が開き過ぎてたからね。」


今の発言で、やっぱり彼は故意だったのだと悟った。

環境が変わった事をきっかけに今までの夫婦関係を修復しようと彼なりに努力をしているのかもしれない。

そう思うことにした。

確かにいき過ぎなところはあるけど…

エレベーターで1Fまで降りる途中、3Fで止まりエレベーターの扉がゆっくりと開かれていく。

その向こうに見えた彼女の姿に心臓が嫌な音を立て騒ぎ出す。

彼女がエレベーターに乗り込んだ途端に、充満する香水の香りでむせそうになった。


「あら、ご夫婦でお出かけ?仲が良いのね。 中村君も久しぶりね。」

「あぁ久しぶり。」


1Fに到着するまでの僅かな時間だったのに…窒息しそうなほど苦しかった。
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