諦めて恋だと気づく



 冬は雪が降る。

 雪も雨のように濡らしてしまうので、あまり酷いとビニール袋が活躍するのだが、今日は降っていない。
 しん、と冷える。

 雪が降っている日と、太陽が出て雪が降っていない日と比べると、雪が降っていない日のほうが寒い、ということはたびあびあって珍しいことではない。
 駅に入るときにはすでに足の爪先は冷たくて、ポケットに入っているカイロの暖かさが爪先にあればな、と白い息を吐いた。



 電車に揺られるのは、三十分くらい。

 いくつかの駅を止まっては、進む。都会とは違ってぎゅうぎゅうになることはあまりないが、それでも朝はまあまあ人がいる。


 ―――いた。


 真っ黒。
 学生なんだから髪の毛は染めないだろうけど、ダッフルコートも、学生服も真っ黒だから、サラリーマンとかぶる。まあ、たたずまいが若いから間違えることはない。

 彼は私より遠いところから乗っていて、私が降りても乗っているようだった。

 同じ学校の生徒ではない。私の学校はブレザーだから、男子生徒は学ランではなくネクタイ。彼にはブレザーより学ランがばっちり似合っている。
 


 今まで気になるタイプが、何となくわかるようになった。

 イケメンじゃないこと。

 妙にちゃらちゃらしてたり、髪の毛にかなり気を使ってたりとかしてなくて、ナチュラルな感じの人。

< 2 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop