諦めて恋だと気づく



「くせ毛とか枝毛とかないって感じで、目は大きな子。ぱっちり二重」



 学校についてから、美紗はいつものように学ランの彼のことを聞いてきた。だから、私は話す。



「彼、笑ってた」



 女の子は学ランの彼と話していた。彼はヘッドホンを外して、驚いたような顔をしながら喋る。

 私は耳から聞こえるロックなんかより、ねえと思っていた。


 ねえ、誰なの。見たことないけど、どうして乗ってきたのって。
 そんなこと言える立場ではないけど、思っていた。


 私と彼との間にはなにもないけれど、女の子の登場で空間が変わってしまった。



「幸恵」
「私、はじめて見た。彼が笑ってたのをね」
「それって彼女…」



 しまった、という顔をした美紗に私は頷く。

 同級生なのかなんなのかは、さておき。知り合いなのは確かだ。話すのも知り合いなら変じゃない。変じゃないが、あれは「そうだね」彼女、だと思う。

 そうか彼女か、と私はロック音楽を聞きながら何かが落ちるような気分だった。


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