ラブ×コントロール
「はぁー良かったぁ…」
「絵美っ!」
私の声に、スタンド席に座っていた絵美が振り向く。
「宇美っ!」
「ごめんっ…遅くなったっ」
「遅いよ~どこ行ってたの―?」
「ごめん、ちょっと外せない用があって」
そう言いながら私は絵美の隣に座る。
「何よ用って―?」
「うん…あっヤバイ!もう7回なの!?」
「そうだよ、宇美が遅いから―」
「はぁ―でも良かった、勝ってるみたいで」
「でも点差は1点だけだよ~?さっきだって危ない所あったし~」
「そうなの?」
「そうだよ、詳しい事は分からないけど、今日の本道は少し波があるみたい」
「波?」
私はベンチの中にいるカイを見ようとするけど、スタンドからは桜川のベンチは見れなかった。
8回表。
私は、カイがマウンドへ走ってくる姿を見つける。
「カイ…」
カイはマウンドに立つなり、スタンドというか、こっちをチラッと見た。
そして、私の姿に気づいたように見えた。